金の展性

原子番号79、元素記号Au。日本語で。英語でGold。ラテン語でaurum。

歯に被せてあった金属を作り直した。被せモノを作る時は材料を説明してくれるが“金”の利点について初めてまともな説明を受けた。
金歯は高くてお金持ちのステータスかと思っていたが、実用的にも優れているらしい。
セラミックスは強度的に若干弱い。保険適用の銀主体の合金だと、稀に金属アレルギーを起こすこともあるが、金だとその心配はない。それよりも金歯は、噛んでいるうちに歯に馴染み、歯との隙間に虫歯ができにくい。

金は、その輝きから宝石としても貴重な金属であるが、薄く延ばして金箔として装飾に使ったり、半導体のワイヤボンディング(半導体チップとケース間の電線)に使ったりと用途は広い。ダイアモンドは人口で合成できるが、金も原理的には原子炉内で水銀から金を作ることも可能なようである。しかし、作られる量も少なくコストもかかるので割に合わない。

金箔は様々なところで使われているが、建物では有名な京都の金閣寺(鹿苑寺)。最近の張替えは1987年(昭和62年)。10.8cm四方の金箔約20万枚(約20kg)を使用しているらしい。1950年(昭和25年)に放火により全焼し、1955年(昭和30年)に再建されているが、1987年に張替えられた時の金箔の厚さはそれまでの5倍だそうだ。

金歯も金箔も金の優れた展延性を有効に利用している。
展延性とは、展性延性を示す言葉だが、どれくらい展げ(ひろげ)られるか、どれくらい延ばせるかと言う性質。展性・延性とも金属の中で金が最も優れている。金1グラムで数平方メートルまで広げることができ、長さでは3000m程度まで延ばすことができるらしい。
つまり、少量の金で広い面積の金箔ができる。金歯も噛むと金が展がり自分の歯と金歯の間を埋めてくれる。

輝き以外にも優れた性質を持つ金であるが、もちろん埋蔵量は少なく希少で高価、と言うのが唯一の欠点。
宝石としては、その希少性が人を惹き付ける理由の一つでもある。

“錬金術”の実用化までにはまだ時間がかかりそう。

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