ホワイト国

輸出貿易管理令の通称“ホワイト国”と言う言葉がニュースによく出てくるようになった。経済産業省はこの“ホワイト国”と言う通称は廃止し“グループA”と言う名称に変更したが、いずれにせよ、このカテゴリー分けの意味をどれくらいの人、特に、ニュースを伝える側の報道関係者が理解しているのだろうか、と疑問に感じる。

輸出貿易管理令は、海外へモノやサービスを輸出する時に、軍事転用されないようにしっかり管理しましょう、と言う決まり事。

東西冷戦の頃は、ココム(COCOM=日本語では”対共産圏輸出統制委員会”)と言われる共産圏向けの輸出を規制する制度だったが、その後、テロリストやテロ支援国家などに軍事転用可能な製品や技術が渡らないようにする、と言うのが主目的になっている。

輸出管理の考えとしては、ほぼ全てのモノや技術を輸出する場合に何らかの審査が必要であるが、
・輸出するモノや技術(リスト規制やキャッチオール規制)
・輸出する相手国(グループA~D、従来のホワイト国や懸念国)
・輸出する相手企業(外国ユーザーリスト)
さらには
・輸出しようとする企業など(一般包括許可など)
によって、輸出時の審査が厳格化または軽減される。
(詳しくは、<CISTEC 安全保障貿易情報センター>ホームページを参照してください)

昨今ニュースになっている韓国向け“ホワイト国”適用除外は、相手国によるカテゴリー分けが変更になる、と言うことだが、輸出時の審査を厳格にしましょう、と言うだけで輸出禁止などでは無い。

一部で、今まで必要なかった手続きが増える可能性があるが、韓国に輸出している企業は同じ製品を例えば台湾にも輸出している事が多いと思われる。そう言う企業にとっては、実質的に韓国向け輸出が面倒になる、と言うことは無いだろう。
(<なぜ韓国の「ホワイト国除外」で“空騒ぎ”するのか>に分かりやすい説明があります)

輸入側が行う関税率の引き上げとは違い、直接的には貿易量への影響は無いはずであるが、一韓国向け輸出制限というような報道が目立った。

輸出管理は安全保障上の仕組みで、時代と共に内容や制度が変わっていく。

以前は、チンコム(China Committee=対中国輸出統制委員会)やココムで輸出規制の対象となっていた中国が、現在では日本の輸出相手国1位となっているのは、時代の流れを感じる。
逆に言うと、現在の世界の枠組みが10年後、20年後にも変わっていないと言うことはあり得ないのだろう。

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