ロシアの西 、ソ連の東
2022/5/22
最近、本ブログの更新が滞っているが、理由の一つが本(紙の書籍)を読むことが多くなったから。
その中に、第二次世界大戦の頃のソビエト社会主義共和国連盟、略してソ連をめぐる内容の本が2冊あった。
<ロシアの西>
ウクライナ侵攻でニュースによく出てくる地名に黒海に面する重要都市「オデッサ」があった。地名の読みをそれまでのロシア語読みからウクライナ語源読みに変えたため、多くのメディアでは今では「オデーサ」と呼ばれる。
フレデリック・フォーサイスが書いた「オデッサ・ファイル」と言うスパイ小説の古典がある。何度か読みたいと思っていたが、なかなか本を買う機会が無かった。
ニュースでオデッサを頻繁に聞くようになり、小説を買ってみた。既に廃刊になっているようで、ネットでも中古本しかなく、送られて来たのは程度の相当悪い単行本。まあ、それでも文字は読める。
小説の冒頭に「オデッサ・ファイル」のオデッサは地名ではなく、組織の名前だと書かれている。
オデッサ (組織) – 第二次世界大戦後、ナチス親衛隊の戦争犯罪人を匿うことを目的として結成された秘密結社。Organisation der ehemaligen SS-Angehörigenの頭文字「ODESSA」から。- Wikipediaより
第二次対戦中ナチスで悪行を働いた人物をめぐる小説。
ナチスが根絶の対象としたのはユダヤ人だとはよく知られている。
恥ずかしながら今まで知らなかったのだが、ナチスはユダヤ人以外にも共産主義者やスラブ民族、アジア系、アフリカ系人種にも迫害を行っていた。
スラブ民族はロシアやウクライナ、ポーランドなどに多く暮らす人々。
プーチン大統領のナチスに関する発言をニュースで聞いていて、今ひとつ理解できなったが、スラブ民族も迫害を受けたことを知り、異常な反ナチス発言の背景が何となくわかった気もした。
そうは言っても、80年ほど前の怨みを、関係のないウクライナ人に向ける。この辺りの感覚は凡人の自分には到底理解できない。
<ソ連の東>
村上春樹さん。言わずと知れた世界中で有名な小説家だが、紀行文も書いている。海外に行けない今は、それらのトラベル・エッセイを読むのも楽しい。
たまたま買った短編紀行文集に「ノモンハンの鉄の墓場」と言うタイトルがあった。
「ノモンハン」。何となく聞いたことがある程度の地名だったが、読んでみると、こちらも激戦があった土地。
1939年、当時の満州国軍・大日本帝国とロシア・モンゴル連合軍が戦った。
日本では「太平洋戦争」の始まりは1941年と言うことになっているが、アジア大陸の東ではすでに「事件」や「事変」と呼ぶ軍事侵攻はすでに始まっていた。
中国側(今の内蒙古自治区)には、満州住民を使って建造された強固な要塞があった。軍備に劣る日本軍はその要塞に立て篭もり戦ったが、ロシア軍の化学兵器攻撃により、要塞に閉じ込められたまま殲滅されたと言うことだ。
モンゴル側には砂漠に当時の戦車など「鉄」が置き去りにされたままになったいた。
村上春樹さんがその地を訪れ、エッセイを書いたのは1994年頃。ノモンハン「事件」が起きてから約半世紀。その時点の風景が目に浮かぶように描写されている。
ちなみに、ロシアやモンゴルでは、その「事件」は「戦争」と呼ばれる。
帝政ロシアからソ連になったのが1922年。ソ連はその西でも東でも戦争に追い込まれた。恐らく当時は、西はナチスドイツ、東は日本に攻め込まれてやむを得ず(?)戦争に踏み込んだのだと思われる。
今回のウクライナ侵攻も同じく「やむを得ず」「特別軍事作戦」を開始したと言う理屈。
前世紀の復讐を21世紀の今になって行っているように思えるロシア。
時代は変わり平和になったと思っていたのは平和ボケした日本人だけ(自分だけ)だろうか?