ナイキ と 富岡製糸場

米スポーツ用品大手ナイキやスウェーデンの衣料品大手H&Mが中国の綿花生産にウイグル人が強制的に働かされている、と懸念を表明して中国で不買運動に発展している。

綿、カタカナではコットン。
アオイ科ワタ属の植物で、俗に“綿花”と呼ばれるのものは、花が咲き終わり実が割れた時に出てくる。
これを収穫し、乾燥させて繊維に加工する。

10年以上前に見たテレビ番組によると、収穫は秋、収益を得るには短期間の間に大量に収穫しないといけない。文字通り人の手で摘んでいく。秋と言っても、晩秋になると寒い。それでも防寒用の手袋を着けると綿を摘むことができないので、素手で作業することになる。手はヒビやアカギレで痛い。往々にしてこれらに携わる労働者は歩合制なので、作業を休むことができない。その番組が日本のテレビだったか中国のテレビだったかの記憶は曖昧だが、正にウイグル人労働者だった。

世界遺産にも指定された富岡製糸場。
こちらは植物では無く、昆虫(蚕)の繭から引っぱり出す絹、シルク。明治5年に建てられたと言うが、絹の生産はやはり主に手作業。絹は、江戸時代以降、日本の重要な輸出産業だった。

工業化が十分に発展する前は、これら手作業の産品を輸出して外貨を稼ぐのは、発展途上国にとってはある程度やむを得ない。
日本の絹産業に携わった、主に女工さんが、純粋に給与所得を得るために働いていたのか、工場または親兄弟などから強制的に働かせていたのか分からない。
恐らく、どちらか一方と言うことも無かったのだろうと思うが、当時の輸出産業はこれらの労働者が支えていた。

騒動になっている新疆綿、こちらも強制労働なのか、純粋に給与を得るための労働なのか、と言うのを判別するのは難しいのでは、と思う。中国では、労働者本人、特にウイグル人など少数民族の意思を確かめる術が無いのが最大の問題。
“西側諸国”の報道では、ウイグル人に対する迫害はひどいようだ。少なくとも中国の官製報道よりは信頼できると思われるので、綿花生産に強制的にウイグル人が投入されているのは全くの嘘とは思えないが、それらの綿を単に不買にすることで、ウイグル人の待遇が変わるのか、と言うのも疑問ではある。

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