去り際の美学

数年前に、一緒に仕事をしていた後輩が退職したことがあった。退職理由は良くある“一身上の都合”だったが、その直前には注意散漫なのかケアレスミスなども増えていたような気がする。
当時、人事課長に“辞めて行く人は仕事に無気力になったり、人によっては会社に害を及ぼす行為をする場合もあるので退職まではしっかりケアをする様に”と注意を受けた。幸いその時の当人は、最後まで引継ぎはしっかりして辞めて行ってくれたので、実務面ではそれ程困る事は無かった。

今日(アメリカでは12月14日)は、11月3日の投票で選ばれた選挙人による大統領の投票日。来年(2021年)1月6日に投票結果が集計されるらしい。
現職大統領のドナルド・トランプ氏は、今のところの情勢では、新大統領就任(1月20日)を持って退任すると思われる。普通であれば“思われる”と言うような不確かな表現は使わなくても良いのだろうが、今回ばかりは何が起きるか分からない。

日本語には「立つ鳥跡を濁さず」と言う諺がある。
普通の意味は、”立ち去る者は、見苦しくないようきれいに始末をしていくべき”という戒めの言葉。引き際は美しくあるべきだということ。

会社員と一国の指導者で大きく違うところが一点ある。
会社を退職すると基本的にはその組織(勤めていた企業)の構成員では無くなるが、国の指導者の場合はそうでは無い。指導者を退任しても、その国の国民ではあり続ける。
一般的には、後任者にスムーズに引き継がないと国の運営に、つまり今後も自分が所属し続ける組織に、少なくとも短期的には支障が出る。

「立つ鳥跡を濁さず」にはうがった見方をすれば、何の功績も残さずに去って行く、と言う解釈もある。
その場合は、自分が存在していたことをアピールするために何らかの”足跡”を残して行きたいと言う人もいる。良い功績であれば、問題無いが、退任する人が良いと思っていても、後任者が良いと思わないケースもある。

簡単に去り際と言っても難しい。

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