ウィスコンシン州の白人社会
ウィスコンシン州ケノーシャ(Kenosha, Wisconsin)で再び痛ましい事件が起きた。
大阪なおみ選手が抗議の意思としてニューヨークで行われているテニス大会の準決勝ボイコットを一時表明するなど全米のスポーツ界でも抗議の輪が広がっている。
今年の一連の抗議の発端となった警官による黒人襲撃事件が起きたミネソタ(Minnesota)州の東隣がウィスコンシン(→関連記事)。
何回かウィスコンシン州に関連する記事(→こちら)を書いたが、出張で行っていたのは、ビーバーダム(Beaver Dam)と言う町。3回の出張で計2ヶ月半ほど滞在した。ビーバー・ダムは牛や豚の牧場が広がるすごく良い田舎町で、人々も温かかった。
記憶を頼りに当時の状況を書くと、人口は約15000人、ほぼ全員が白人。非白人は黒人が二世帯だったか。完全な白人社会。
ビーバーダムではあるチェーンのモーテルに泊まっていたが、取引先相手の人が毎晩のように夕食に誘ってくれた。モーテルにはバーがあり、毎日夕方そこで軽くビールを飲んでから食事に出掛けるのが常だった。バーにはカウンターやカウンターテーブル、ダーツ、ジュークボックスなどがある典型的なアメリカのバー。そう、映画Back To The Futureに出てくるような感じのところ。
地元の人達も沢山集まってくる場所だった。
人口15000人の町には、朝夕のラッシュ・アワー(rush hours)は無く、あるのはラッシュ・ミニット(rush minutes)。
飲み屋”街”は無く、あるのは、1件のバー。そんなバーに、毎夕アジア人の若造が通っていると目立つ。
1週間もすると、その店にいる人はみんな自分のことを知っている感じ。それどころか、昼間に通りを挟んだ向かいのスーパーに買い物に行くと”Hi, K!”、と声を掛けられる。心の中では、”誰やあんたは?知らんがな。”と思いながら、適当に”Hello”と返事すると言う日々。
地元のお祭り(収穫祭のようなfarmer’s festival)などに行っても、年配の夫婦から声を掛けられることもあった。
そんな人たちは、息子が沖縄にいたんだ、とか、甥っ子が横須賀にいるんだ、とか日本に興味を持ち、何らかの関連を持っている人も多かったが、日本人と話すのは初めての人も多かったのだろう。
取引先の会社は地元では有名な会社の子会社、そんなところに極東の日本からわざわざ出張に来てくれているゲスト。時が経てば帰国する若者。そう言う立ち位置にいたので、特に差別を感じることも無かった。
ただ、出張などで短期間過ごすのと実際にその町に住むのでは全く異なるに違いない。きっとそう簡単では無いのだろうな、と何となく思った。
ウィスコンシン州でも州都のマディソン(Madison)やミシガン湖沿いの大都市ミルウォーキー(Milwaukee)、同じくミシガン湖の面するケノーシャは、そこまで白人比率が高くないと思うが、複雑な人種間問題は常にあるのだろう。
それを無視はしないで、問題だ、と声を上がることのできるアメリカ社会の自由さはまだ残っている。