唐の時代と中国文化 中国人の世界観・三

北京市内に中国人民革命軍事博物館と言うの施設がある。中国に数ある反日歴史博物館の一つ。
北京滞在中の2000年台初めに行った時には、古代からの武器や戦争、歴代王朝の歴史が文物やパネルで展示してあった。
時代・王朝ごとの展示だが、朝の展示にはスペースが割かれている。日本でも遣唐使など有名で、618年から約300年続いた王朝。
日本で言うと、大化の改新や平城京遷都、平安京遷都、さらには古事記・日本書紀の編纂などが中国では唐の時代に起きたこと。

それに引き換え、王朝(1271~1368年)はほんの少ししか展示されていない。
日本では鎌倉時代に文永の役・弘安の役と2度に渡り襲撃を受け、”神風”で撃退したことは社会の授業で習った。
中国人の感覚でははモンゴル人の王朝、つまり外国人に支配されていた時代。

唐王朝の版図(百度百科より)

中国人は、歴代最高・最強の王朝はと認識されている。言葉の端々に偉大な唐の時代を有していた中国が、最近のように世界から見下されているのは日本をはじめとした諸外国の搾取のためだ、と言う鬱屈した感情が見え隠れする。
世界(東アジア)を制した唐王朝の隆盛に追い付き追い越すことが現代中国人の目標とも思える。
最近の報道・社会の雰囲気から察するに、今の共産党政権はその野望を実現しようとして猛進しているのか。

昨年仕事で来日した中国人と唐の話になった。
西安(唐の時代の首都・長安)の大学で唐服を着て卒業式に出席しようとした学生が、大学当局から参加を止められた。理由は”日本の和服を着ているから”だったらしい。その中国人曰く、日本の和服は帯を除けば唐服を忠実に受け継いでいるとのこと。

そんな自国の歴史的文化を否定しながら、版図だけはその時代を目指す国。
王朝が変わるとそれ以前の王朝の歴史・文化を否定するのが中国の伝統なので、唐服を否定するのは理解できなくも無いが。

歴代中国(一部の時代だけかも知れないが)の文化を現代まで忠実に伝えて来ているのが日本。そう言う優れた文化を持った時代もあった歴代の中国。唐の時代には世界的に誇れる文化もあった。
一般の中国人には、中国では失われた文化を現代まで伝えている日本に対しては”嫌いだけど尊敬する”と言う感情がある。

ところで現政権下の中国には世界に発信できる文化と言うのはあるのだろうか?
今後、IT関連を中心に新しい文化を創り上げていく可能性はあるが、過去70~80年間では世界が共感できる文化は思いつかない。もちろん私の認識不足と言うことは十分考えられるが。

いずれにしても、中国と日本は切っても切れない長い文化交流の歴史がある。
政治、経済、文化など国と国の関係性には色々な側面があるが、全てを”一緒くた”にして全体として良い・悪いと見るのではなく、良いものは良い、悪いものは悪い、と考えないといけないと思う。

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