風に向かって進むヨット と 飛行機
東京メトロ(地下鉄)は、オリンピックの色々な競技を紹介したプロモーションビデオを車内で流している。最近は、ヨット競技の紹介。
ヨットに興味を持ったのは、小学生の頃。海から遠い(少なくとも子供にとっては)ところで育ち、実物のヨットも見たことが無かったが、科学と学習(学研)の記事に書いてあった”ヨットは風上にも進める“と言う記事を見て面白そうだな、と思った。
ヨットに乗る人にとっては当たり前だと思うが、ヨットが風上に進めるのは飛行機が飛べるのと同じ原理。
「流体の速度が増加すると圧力が下がる」と説明される「ベルヌーイの定理」によるらしい。
飛行機の翼を横から見ると、翼の上面の流れは下面の流れよりも速くなるから、上面の圧力は低くなる。この圧力の差によって翼は上に引き上げられる(図1)。これが揚力。
突き詰めるとよくわからないが、とにかく飛行機は揚力を得て浮き上がる。
ヨットが風上に向かって進めるのも同じ原理、とヨットに乗り始めた頃に教えられた。飛行機の翼は横から見たが、ヨットのセール(帆)を上から見ると同じような形になる。
ここで理科か算数の時間に習ったベクトル。図3の赤い矢印(飛行機の揚力と同じ)は、2つの黄色い矢印(ヨットの前進と横流れ)に分解できる。
この横流れを抑えてやれば、ヨットは風に向かって斜め前に進むことになる。
横流れをどうやって抑えるか、と言うところがヨットにとって面白い所でもあり、厄介なところでもある。
ヨットの船体の下(水中)には、センターボードやキールと呼ばれる横流れを防ぐ板・重りがある。
このセンターボードによって、横流れを抑えるとヨットは風に向かって(45度の風上)前進する。
めでたしめでたし。
上から見てベクトルだけで考えるとそうなのであるが、横流れ防止板(センターボード)があるのは水中。水面上にあるヨットの大部分は依然として横流れしようとする。下だけ無理に抑えると傾いてしまう(ヨットではヒール=heelと呼ぶ)。
ヒール(傾き)を抑えるのはヒトの体重。なるべくヨットの中心線から離れたところに体重の重心を持って行くようにする。
風の強さや向きは絶え間なく変わるので、安定した走りをしようとすると、常に体重移動をしなければならない。
週末セーラー程度であれば、
・強風の時には海に出ない
・風上に向かっては無理して進まない(風上に向かって45度はあきらめて30度くらいで妥協する)
など楽する方法もある。
しかしながら、レースになると如何に風上に向かって速く進むかが、結果を左右する重要なポイントのひとつ。
ヨット競技もこの風上に進む(クローズド・ホールドと言う)技術や風の読み方、コース取りなど面白い場面は色々あるが、今まではテレビで見ていてもよくわからなかった。次回のオリンピックではドローンを使った撮影など、テレビ観戦にたえられる映像技術を期待したい。