ミャンマー国境地帯 不法入出国
昨年(2019年)11月にミャンマーに行く前、ミャンマー関連書籍を何冊か読んだが、その中に高野秀行さんと言う冒険作家の著書『アヘン王国潜入記』『西南シルクロードは密林に消える』があった。外国人が入れない少数民族の居住地帯で実際に体験された内容をまとめたノンフィクション。
これらの本を読んで、思い出したのが、2004年2月に中国・雲南省に遊びに行った時のこと。その時、雲南省からミャンマーに不法入国した知人(日本人)の話を聞いた。
雲南省と言うのは、ベトナム、ラオス、ミャンマーと国境を接し、タイ系の民族を始め、少数民族の多いところ。我々は、雲南省の省都・昆明からシーサンパンナ(中国語では、西双版纳)の中心都市・景洪(Jing Hong)まで飛行機で行き、そこを拠点にミャンマー国境沿いの観光をした。
タクシーを1日チャーターし、打洛(Da Luo)と言う国境の町に行った。平穏な中緬(ミャンマーの漢字表記は緬甸)関係を反映してのんびりとした国境だった。外国人には開放されていなかったので、見るだけ、と言うことでタクシーに連れて行ってもらい、写真を撮ってると、国境の入出国検査官が、”写真はダメだ”と手振りで合図し、“日本人か?”と笑いながら問い掛けて来た。
当時の自分は、ミャンマーは国境地帯だろうがヤンゴンだろうが同じだろう、と思っていたので、この国境を超えてバスでヤンゴンに行ければ面白そうだな、と単純に思っていた。
打洛から景洪に戻り、夜の街を徘徊していると、全くの偶然で知人に出会った。その知人曰く、“飲み屋で知り合った中国人に「カジノに行かないか?」と誘われ、ついて行った。金網のフェンスが途切れたところを潜り抜け、カジノのある所に着いた。どうも中国とは様子が違うと感じ、ミャンマーに連れて来られたと気付いた。カジノに興味はあったが、不法に国境を越えるつもりは無かった、と強硬に文句を言うと、やっと中国側まで返してくれた”と。
その数日前に、我々は打洛で中緬国境沿いの川を“合法的に”筏下りをしたが、確かに川幅も狭く、国境越えは簡単だな、と思った。
高野秀行さんの著書は、2000年前後、我々が中緬国境に行ったのも2004年、とほぼ同時期であるが、当時の国境警備は文字通り抜け穴だらけだったと思われる。
話しは変わるが、北朝鮮からの亡命希望者(脱北者)も北朝鮮から中国、中国国内を北から南に移動し、陸路ミャンマーやラオス、更にはタイへと移動し、韓国大使館などに逃げ込む、と言うルートが多く使われたようだ。現在の国境地帯の警備状況はわからないが、中国国内移動も厳しくなっている。少なくとも脱北者の亡命は難しくなっているのだろう。
海に囲まれた日本では、違法に入国を試みた外国人の船が見つかった、と言うニュースは時々ある。文字通り命懸けの越境行為であり、国境を違法に越えるのは難しいかな、と思っていたが、レバノンに出国した人の大きなニュースが年末に入って来た。さすがにびっくりした。